その日、レースを見終わった瞬間、私はうれしくて友人にメールをしたことを覚えている。
「化け物が出てきた」
と。そしてこうも書いた。
「順調に成長すれば、クラシックはこの馬で決まりやな。」
そしてその日の日記にはこう書いている。
「来年のクラシックはこの馬で」
ディープインパクトがデビューした日。
デビュー戦を見た瞬間にこの馬だと思い、その後追いかけ続けた馬がここまでの歴史的名馬に成長するというのは、多分、競馬ファンにとって至高の経験ではないだろうか。私にとっては間違いなくそう。だから期待度も半端ではなかったし、不安度も半端ではなかった。もう競馬ファンになってから10年以上経つが、こんなことは初めての経験なのである。世間的にディープが大きな注目を集めだしたのは若駒S以降だと思うから、そういう意味でもなんだかうれしいのだ。自分の相馬眼に対するうれしさというのかな。
えらく騒いでいるけど、去年のキングカメハメハのときも騒いでたじゃないかと思う人もいるでしょう。でも、ディープのそれはキンカメのそれとは決定的に違うんです。2点。
一つは血統。やっぱり競馬は血統なんですよ。ブラッドスポーツ。ディープの父はサンデーサイレンス。近年の日本競馬を作ってきた最高の種牡馬が送り出す最高の牡馬だから、ファンの盛り上がりも違う。
もう一つは王道路線を歩んできたこと。競馬のメインはクラシック。弥生賞→皐月賞→ダービーというのはやっぱりわかりやすいんですよ。王道を勝ち抜いた王者。
ここで一つ苦言を。
東京競馬場、14万人。単勝支持率73%。レコード。圧勝。あらゆるスポーツニュースでも話題になってます。スーパーホース誕生だと。ダービーを勝ったことでディープインパクトは競馬の枠を超えたスターホースになるんでしょう。このまま無事に行けば菊花賞は間違いなく競馬を知らない人がたくさんやってるくる。それは素晴らしいことだ。だけど一つだけ。今日も競馬をよく知らない人が結構行っていたそうだが、競馬をよく知っている人も含め、競馬場に行くならマナーを守るべきだ。とくにパドックでフラッシュは炊くなといいたい。警備員が「フラッシュ禁止」の札を上げているだろう。今日テレビを見ていたら、ひどいものだった。馬は非常に敏感。ディープが入れ込んでいたのがフラッシュのせいだとは言わないが、ほんとにフラッシュ一つで暴れだす馬もいる。馬が暴れて故障したらどうする?馬1頭に億単位の金がかかっているんだぞということがいいたいのではない。馬1頭には関係者はもちろん、何百万人、何千万人ものファンの思いがのっかっているんだ。そのへんをわかってから競馬場に行くべきだ。
「衝撃の伝説。デビューしたときから計り知れない強さを見せつけた。誰もが三冠馬の誕生に思いを馳せ、その衝撃の走りに思いを重ねた。アグネスタキオン、君の強さに魅了された者たちが、名馬の歴史を超越した勇姿を永遠に語り継ぐだろう。」
アグネスタキオンのキャッチフレーズ。ディープインパクトはダービーを勝つことでタキオンを実績面でも超えた。
長く語り継がれるであろうディープインパクトの日本ダービー。武豊はゴール前、手前50mのところからガッツポーズをしていた。スペシャルウィークのときはムチを落としていたが、今回は大丈夫。かなりうれしかったんだろうな。
日記からもうれしさが伝わってくる。あんなうれしそうな豊を見ると私もうれしくなる。
少し自慢だが、私はディープのパドックデビューを世界で初めて見た人間(の一人)だと思う。ディープのデビューレースのパドックに合わせて競馬場に行き、ダッシュでパドックへ行って写真を撮っていたのだが、前のレースが終わっていなかったからか、そのときパドックでは本当に誰も写真を撮っていなかった。そのせいか、ディープを引っ張る厩務員さんがずっと私を見ていたのを覚えている。
今日、正直、東京競馬場に行っておけばよかったと思った。将来、
「私はディープインパクトのダービーを生で見たんだ。」
とは言えない。でも、
「私はディープインパクトのデビュー戦を生で見たんだ。」
とはいえる。前者14万人。後者、数千人。後者のほうが価値があるのかもしれないと思いながら、
「私は、ディープインパクトが三冠馬になった菊花賞を生で見ていたんだ。」
と必ずいいたい。
三冠へ向かって。